小学生高学年で、フランス近代の小品を弾いている生徒さん。
とても良く弾けるタイプというほどではないが、学校の学芸会などでもピアノ担当になったこともあるので、同年代の普通のピアノを習っている人たちに比べると、その学校の学年では、まあ弾ける生徒さんということになるのだろう。
この生徒さんの最も良いところは、練習の継続性があること。
普段のレッスンの様子から、毎日の練習をほとんど欠かしていないと思うので、年間を通じて好不調の波が少なく、発表会などでもそれなりの曲を期間をかけて仕上げることができ、本番も普段の実力から大きくマイナスになるような演奏になってしまうこともない。
ただ、現在弾いているフランス近代の小品には、かなり苦戦している。
フランス近代の小品は初めてではないが、過去に弾いたのは1ページの本当に軽い曲のみで、3ページの今回の曲は内容的に、この生徒さんには少々難しいことは、当初から予想はしていた。
そして、その予想どおりにかなり苦戦気味なのだが、やはり響きのバランス、音の重なりあい、ほんのわずかな間というようなものを、感じることが十分にできていないのだろう。
言葉で指摘しても伝わりにくい面もあるので、何度か実演で示してはいるが、その時に、生徒さんも真似程度に響きを一瞬作れても、次の週にはまた響きが崩れていたり、音がうまく溶け合っていない演奏になっている・・。
楽譜に、「この音は出して、この音はこの音よりは弱く、この音は中くらいで、この音はこの音よりは小さいがこの音よりは出して・・・」
などと、全部書きこんで、一応整ったような演奏にすることはできないことはないが・・・
同じ箇所を実演して、何が、どこに違いにあるのか、その原因は何なのか、それを生徒さんが理解しているか、質問してみると、生徒さんは、
生徒さん : ええと、先生の演奏は、指が軽やかに動いていて・・・
モリス : 指の動きに違い、つまりテクニックの違いってこと?
生徒さん : ええ、はい。テクニック的なことかなぁっと
モリス : それもあるかもしれないが、根本は、そうではないよね。
生徒さん : では、何が違うんでしょう・・・
モリス : ・・・ちょっとした面白いというか、恐ろしい話をしてあげようか?
生徒さん : え?いきなり、面白い恐ろしい話って(笑)・・何でしょう?
その2に続く。